【アニメ感想】86-エイティシックス-(評価レビュー:A-)
86-エイティシックス-(第1クール)、視聴完了。考察というか、評価や感想を書いていく。
非常に勤勉な同僚*1から2021年春アニメでは「86-エイティシックス-」がおススメと情報をいただいたので視聴したもの。気になるところは多々あるものの、結構良かったです。
以下総括。
- 86作品の「0章」的なストーリー。
- 壮大な設定の割には展開はこじんまりした印象。ただ第2クールに期待したい。
- 澤野弘之による音楽。重厚な音楽を効果的に使っているが、若干作品が音負けしている気もする。
第1クールは「0章」的なストーリー
端的に言うと奴隷制度のお話。帝国と共和国の戦争。帝国は無人戦闘機(レギオン)を開発するも、そのレギオンに産みの親である帝国自身が滅ぼされてしまった。レギオンは隣国である共和国に侵略を始める。
共和国側も無人戦闘機を開発しレギオンに応戦。着実にレギオンの数を減らしつつも戦死者は出さない、という戦果を挙げてきた。ただ、実際には共和国側の無人戦闘機には人が乗っていたのだった。
無人機に搭乗しているのは共和国で迫害を受けている86区(通称:エイティシックス)に住んでいる人々である。86区の人々は共和国側から人間扱いをされていないので、何があっても「戦死者はゼロ」。なんとも悲しい話である。
その86区の戦闘員(シン)と共和国側のエリート軍人(ミリーゼ)によるお話。
冒頭で述べた通り奴隷制度のような設定であり、観ていて気分が良くなるものではないものの考えさせられる展開も多く見応えは十分。心をえぐられるような場面もあるが人間て不思議なもので、そのような場面に目を背けたくなる一方で”待ってました!”的な想いも持ち合わせてしまう。鬱アニメに需要があるのもこういう想いが視聴者側にあるからだろう。
壮大な設定の割には展開はこじんまりした印象
上述したように国家間と内部事情を併せた大き目な設定である。が、国家全体を巻き込み覆すようなコードギアス的な展開とはならず、主人公たちが所属する小隊内で話の展開が閉じてしまったところはちょっと残念。ただ、これも上で述べた通り第1クールは序章に過ぎないので第2クールに期待したい。
ミリーゼの安い正義感と反乱しない86メンバーたち
観ていて気になったところが2点。
まず共和国軍人であるミリーゼの「安い正義感」。ある意味洗脳された共和国側の教育を受けてきた中で、86を人間と扱う姿勢は立派なものである。ただ、その「86は人間である」という主張をすることにより周りを乱している。良くも悪くも86を人間扱いしないことで共和国は秩序を守っているので手当たり次第主張しても良いテーマではないはずだ。本当にこの状況を打破したいのであれば、同志を集めて権力のある理解者を味方に付け世論を変えていくなどの動きを取るべきであり、ただ思っていることを場所をわきまえずに口に出してしまうミリーゼにいささか「安い正義感」を感じてしまう。
この点についてモヤモヤしながら観ていたのだが、作中で86メンバーがミリーゼに対して”偽善”だと強くツッコんでおり「そうそう!俺もそう思ってた!」とスッキリさせていただいた。
次に気になったのは「反乱しない86メンバーたち」。なぜ86メンバーはぞんざいな扱いをしてくる共和国に対して反乱を起こさないのか。平和ボケした共和国の連中なんぞ勝てるだろう。86メンバーたちに反乱が出来ないような制約(命令違反したら首輪が爆発するとかそういう類の設定)がある描写は無かったはず。この点もモヤモヤしていたのだが作中で86たちはその理由を語っていた。視聴者のモヤモヤに答えてくれたことは良いのだが、その答えが詰まるところ「誇り」という着地をしており、ちょっと腑に落ちないというかスッキリとはしなかった。
澤野弘之による重厚な音楽
あたかも昔から知っているような口ぶりで「澤野弘之による~」とか記載したが存じていませんでした。勤勉な同僚からこの澤野氏がすごいと、ハサウェイ/ガンダムUCが良かったと、その繋がりで86の音楽が良いのだ、と絶賛いただき認識した次第。
本作、音楽が非常に素晴らしかったです。特に映像との調和。印象的だったのは各話のEDムービー。ED曲のイントロが流れつつ、作中の映像をそのままにEDムービーを迎えるというシームレスなEDへの入り方。視聴者は気持ちが途切れることが無く余韻に浸りながらスタッフロールを眺めることが出来る。
EDだけでなく作中でも随所に場面に合わせた重厚な音楽で盛り上げてくる。ただちょっと気になったのは、設定の割には本作の絵のタッチや空気感は少し軽いので、重厚な音楽とのギャップが生まれ結果的に”ちょっと作品が音負けしている”と感じてしまった。
気になった点はあったものの、あくまで第1クールは序章なので第2クールに大いに期待したいところです。