調査役から一言

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【膵臓腫瘍(SPN)】嫁さんの膵臓に腫瘍が見つかった(その③:合併症後~2回目の合併症まで)

2019年末に受けた人間ドックで嫁さんの膵臓に腫瘍が見つかった。

(その③:合併症後から2回目の合併症まで)

自分自身の整理のため、あと配偶者の立場から見た状況を書くので、同じ境遇の人の何かしらの参考になればと思う。

病名は「SPN:Solid pseudopapillary neoplasmである。日本語名は無いっぽい。比較的若い女性に出来やすいそこそこレアな病気らしい。悪性率は低く、今のところ良性とは言われている。痛みなどの自覚症状は無し。

 

前回記事はこちら↓

takerururu.hatenablog.com

 

前回と同じく、小説でもないので先に結論を言ってしまうと、合併症(膵液漏による大腸静脈破裂)の約1週間後、2回目の合併症が起きて再度緊急手術実施。前回ほどオオゴトにはならず、容体も安定している。

が、もう嫁さんがかわいそうでならない。

 

<目次> 

 

【家族構成】

一応、家族構成を書いておく。一般的な4人家族。全員、今まで大病を患ったことはない*1

  • 俺:アラサーSE
  • 嫁さん:アラサー専業主婦
  • 娘:3歳児。元々なのか幼稚園組だからなのか、おてんばで何も言うことを聞かない
  • 息子:0歳児。昼も夜もとにかく泣く。離れると泣く。かと言って抱っこすると肩を噛んでくる。んで下ろすと泣く。

 

【ざっくり時系列】

 

2020/6下旬(入院19日目)

合併症(大腸静脈破裂)が発生してから数日後、嫁さんの容体も安定してICUから一般病棟に移った。その後、主治医から「病状をお話ししたいので後日病院に来てほしい」旨の連絡が来た。嫁さん経由で連絡が来たし、新たな悪い話というより入院が延びることの説明を受ける形となるため安心して病院に向かう。

コロナ禍のため、基本的に入院患者との面会は禁止なのだが、一度死にかけていること、かつ病院都合で個室に入院させてもらったこともあり、病院側の粋な計らいで少人数であれば面会OKになる。嫁さんからの要望で、上の子も連れていくことになった。

ICUよろしく、嫁さんの入院病棟も相変わらずギリギリのジジババたちで埋め尽くされている中、一人だけ若くて浮いているのが嫁さんである。こちらも相変わらず管だらけ。小さめのショルダーバック的なのを背負っている。管(ドレーン)から出てきた膵液を溜め込む袋が入っているそうだ。

嫁さんと上の子と一緒に主治医からの説明を受ける。以下の通り。

  • 前回の合併症は、漏れた膵液によって大腸の静脈が傷付き、何かをきっかけに破裂した。ただ、これは前例がないのではっきりとは言えない。
  • 大腸の傷付いた部分、出血した血の塊が付着して固まった部分を取り除くため、大腸の入り口から半分ほどを切除し、小腸の出口と大腸の切り取った部分を繋げた。
  • この大腸切除の経過は順調。
  • ただ、依然として膵液漏が起きている。膵液漏が治ったかは、ドレーンから出てくる膵液の濃度(アミラーゼの数値)を測ることで判断できる。
  • アミラーゼの数値が2000以下であれば正常。いま、嫁さんは9万
  • なので、あと数週間は入院か。
  • 1週間ごとにドレーンの太さを細くしていって、最終的には抜く。
  • 入院当初、アミラーゼの数値も正常だったため、数日でドレーンを抜いた。
  • その後、膵液漏が起きてしまったため、検知が遅れて大腸静脈破裂が起きてしまったと思われる。

 「9万」、もはやギャグである。9万がどれくらいヤバいレベルなのかはわからないのだが、時間がかかることはわかった。また、アミラーゼの日別数値を見せてもらったが、合併症後の数日は数千だったのに対して、その後から今日までは9万台で推移していた。おそらく一般的には一度正常値になれば、再度異常値にはならないのだろう。なので入院当初は早々にドレーンを抜いたのだと思う。ただ、嫁さんの数値は増減が激しく、前回の実績もあるので、経過観察期間を長くするものだと思う。

主治医からの説明の後、嫁さんと以下お話。

  • 大腸静脈破裂のとき、陣痛より痛かった。
  • 叫びまくっていたので、同室の入院患者に迷惑を掛けた。が、いまは個室になって良かった。
  • 一時、血圧が20-50になった。
  • 主治医の腕毛が濃い。手術中、お腹の中に毛が入るのではないかと懸念。

「血圧が20-50」って危篤状態なんじゃなかろうか。。。

ともあれ、顔色も良くなって本当に良かった。一緒にランチをして、洗濯物をコインランドリーに持って行ったり、水を買ってきたりした後、帰宅。

病院から夜中に呼び出されても駆け付けられるように禁酒をしていたのだが、ここから少し解禁。

 

2020/6下旬(入院21日目)

油断していた。

 

どう考えても前回の合併症がこの話の山場だったはずだろう。

 

この日は俺と上の子の2人。午前中に幼稚園に連れていき、帰ってきた後は近くの水族館に行った。子供が入り口にあるガチャガチャをやりたいと言うので、今日はこの1回だけだよ、という約束の下、200円を入れる。案の定、出口のガチャガチャをやりたいと言い始めたので喧嘩しながら帰宅。そろそろ風呂でも入ろうかと思った夕方、携帯が鳴った。画面には病院名が出ていた。

 「うそやん」

最初に思ったのはこれだった。電話を出るといつもの主治医。以下。

  • 今朝、ドレーンから出血が見られたので、検査実施。
  • 結果、膵臓から脾臓に向かう血管に異常が見られた。
  • 漏れた膵液により血管の壁が溶けて薄くなり、血流の圧に耐えられず肥大化。
  • いわゆる動脈瘤が起きた。
  • これが破裂すると大量出血する。なので、緊急で対処要。
  • 現状、容体は安定していて、血圧も問題なし。痛み等の自覚症状も無し。
  • まずは詳しい検査をこれからするが、処置できる方法は基本的に以下二択。方法は放射線医とも相談する。
  1. 血管を縛って血流を止める。つまり、その先に繋がっている脾臓を諦める。
  2. ステント(人工血管みたいなもの)を入れる。脾臓は残せるが、血が固まりづらくなる薬を一生飲む。

この選択肢、あんまりだろ。主治医から、まだ若いので一生薬を飲むより脾臓を諦めた方が良い、と勧められた。俺もそう思う。でも、わざわざ転院もして、腹腔鏡だけではなく結局開腹もして、大腸も半分無くなって、最終的には脾臓も諦める?ちょっとこの展開はさすがにひどいんじゃないか?

 なんかこう、大きな悪い流れ、みたいなのを感じる。

「ご心労を掛けることが多く、、、」と主治医から結構気遣った話し方をされた。こう立て続けに起こると気を遣うだろう。医師の方だってこれから緊急手術をしなければならず、神経が磨り減る場面が多いはずで、頭が下がる思いだ。

 

上の子を両親に預け、車で病院へと急ぐ。たぶん、この選択肢ならば嫁さんも脾臓を諦める方を取るはず。ともあれ、今回は命の危険は無いだろう。

脾臓を諦めるかどうかなんて、大きい話のはずなのに、「命の危険が無い」というだけでちょっと安心している自分がいる。なんだかな。

 

 病院に着き入院病棟へ。まだ検査中とのことで、看護師さんに放射線治療室へ連れていかれる。たしか電話で放射線医と相談とか言っていた気がする。既に消灯された院内のベンチに1人佇む。5分くらい経った頃、治療室から看護師さんが出てきた。「そろそろ終わりそうなので」と声を掛けてくれた。嫁さんの意識はちゃんとしていて話せる状態にあるとのこと。それはそれで一安心。数分後、主治医が現れて、治療室に入った。手術台に乗っている嫁さんと、嫁さんの腹部を押さえている医師がいた。

 「手術は無事に終わりました」

 え!もう手術したの!?

主治医、放射線医の話をまとめると以下である。

  • 検査したところ、やはり動脈瘤がある。
  • 通常は、(上述した)血管縛るかステントの二択。
  • この病院に動脈瘤対処のテクニシャンである放射線医がいたので主治医が相談。
  • 結果、第三の選択肢を取る。
  • 足の付け根の血管から針金みたいなのを入れて、動脈瘤の場所まで移動。血管の膨張した部分にこの針金をグルグル巻きにしてはめ込む。
  • こうすることで、血流に耐えることが出来、数日すれば血管の壁も正常な厚さで作られる。
  • 手術は成功。数日様子を見て、問題なければこの動脈瘤対処は完了。
  • 膵液漏による合併症としては、この動脈瘤が比較的多く発生する症状。前回の大腸静脈破裂は聞いたことがない。

いろいろ矢継ぎ早に説明を受けて、「なるほど・・なるほど・・」と分かったような分かんないような感じで頷いていた。とにかく、想像以上に良い方向で済んだのだ。

嫁さんの意識もあったので、本人の同意の下、手術を進めたとのこと。その場で嫁さんとも話が出来、多少笑顔も見れた。医師たちも「いやーこの程度で済んでよかったです」と終始和やか。私も胸を撫で下ろした。でも、前回の手術に比べたらオオゴトではないけど、これでも十分なコトだと思うのだが。。私含めて若干感覚が麻痺してきたようだ。

同席していたセンター長は「これはかなりテクニシャンですよ」と何度も言っていたので、誰でも出来る手術方法ではないのだろう。また、今回手術を担当したテクニシャンの放射線医は明日から出張とのことで、これまた不幸中の幸いだったのだと思う。

手術が終わったのが夜8時。全員が仕事終わった感を出している中、別の医師が駆け込んできた。

 「先生、もう一人動脈瘤の患者が・・・」

 「ええー!」

テクニシャンの放射線医は駆け込んできた医師に連れられて消えていった。自分(SE)なら、こんな時間に照会が来ても、翌営対応で仕切ろうとユーザーに食い下がるところだが、医療関係だとそうもいかないだろう。本当に頭が下がる思いだ。

 

治療室からICUへ移動するのに付き添う。センター長から、次に動脈瘤が起きて、テクニシャンな対応ができない場合、二択(血管縛る or ステント)はどちらを取るか、を問われた。嫁さんの意思も同じく、血管を縛り脾臓を諦める方で、と伝える。脾臓は胃からも血管が繋がっており、膵臓からの血管を縛っても脾臓機能が全滅することは無いとのこと。3~4割程度の脾臓機能低下が起き、一部は壊死するので、その時には1週間くらい発熱するらしい。

嫁さんがお腹減ったというので、おにぎりとパンを買いにコンビニへ。手術してすぐにおにぎり食えるのか・・とも思ったが、食欲もあるのならばもう大丈夫だろう。一応、近くのホテルを予約して一泊。今度こそ、プロジェクトAを観終えることができた。やはり、吹替ではなく字幕で観るべきだと思う。中国語の音の流れが気持ちいいんだよな。

翌朝、嫁さんの朝ご飯を買ってからICUに。もう一生分ICUに入った気がする。嫁さんもこの3週間で一生分手術をしただろう。ICUの看護師さんから「また手術してICU来たの?!そんなに来るもんじゃないよ!」と嫁さんは言われていたらしい。いや、来たくて来ているわけでは。。んで、帰宅。

 

ちなみに、嫁さん含め後日知ったのだが、動脈瘤にはめ込んだ針金みたいなものは一生そのままらしい。「え、そうなんだ。。」「うん、そうらしい。。」という何とも言えない会話を嫁さんと繰り広げた。

 

数日後、はめ込んだ針金も移動してしまうことなく、動脈瘤の経過も順調。本件はクローズとなった。

 

ただ、引き続き膵液漏は起きているとのことで、入院は更に延びていく。

 

【雑談】

「悪い流れを断ち切る」ためにはどうするべきか。どうしようも無くなった時、人間の行きつく先は、「旅」「筋トレ」「神頼み」と相場が決まっている。嫁さんの状況的に一緒に出来ることは「神頼み」である。祈願とかそういうのはほとんど興味が無い方なのだが、ここまで来ると都合よく神にすがりたい気持ちだ。嫁さんが退院したら一緒に厄払いに行こう。*2

 

 

 

 

【次回】

もう何も起きるなよ・・・

 

その④に続く↓

takerururu.hatenablog.com

 

*1:別記事で私の顔面麻痺について書いているが、私的大病はそれ。

*2:ちなみに嫁さんが入院してから、私はアホみたいに筋トレはしているので安心してほしい。