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【アニメ感想】推しが武道館いってくれたら死ぬ(評価レビュー:A)

推しが武道館いってくれたら死ぬ、通称「推し武道」、視聴完了。考察というか、評価や感想を書いていく。

 

Negicco好きの職場の先輩(50)が、「地下アイドルの実情を確りと取材した上で作られているところに好感が持てる良評価アニメ」と推していたのだが、動画配信はFOD独占のため一旦保留。同じくFOD独占配信の映像研も気になっていたため、これを機に契約し視聴。地下アイドルの実情はよく知らないのだが、以下総括。

  • 脚本・構成・作画等、全般的に良アニメ
  • 顔が映える繊細な作画
  • オタクの「積む」という行為に嫌悪感を抱く人は受け入れられない作品

一言で言えば、確りと作られている良く出来たアニメ。1クールだし終始ポップなので万人に勧められる。が、「積む(推しのアイドルのCDとかを握手券や投票権目当てに買いまくる行為)」という行為を自分がどう受け取るかで本作の評価は変わってくると思う。

 

地下アイドル(女性)を応援するオタク(女性)の話

既に興味が出てくる。岡山県で活動するローカル地下アイドル(7人組)の最不人気メンバーを応援する女性主人公。今までアイドルに特別興味は無かったものの、地下アイドルの野外ライブに偶然居合わせ、メンバーの1人に心を奪われる。それ以降、熱狂的なオタクへと変貌する。

 

顔が映える良作画

このアニメ、なんといっても作画が良い。特に人物画。アイドルものなので人物画に力を入れるのは当然なものの、本作は特に顔が映えている。瞳の描き方が丁寧で色も各キャラのイメージカラーになっており繊細。上まつげに白いラインを入れる塗りは珍しく*1、これにより瞳全体が鮮やかになっている。

アイドルものなのでライブシーンは欠かせないが、本作はそこまでライブに力を入れているようには見えない。クオリティは良く、3Dからのセルシェーディングなのか元々のセル画なのかが見分けるのが難しいほどである*2。ただ、ライブシーンの時間が短いのだ。でも、主人公はアイドル側ではなくオタク側なので、ライブシーンの力の入れ具合はこれで良いのだと思う。

 

アイドルグループ内の仲は良いが競争心が足りなくないか?

ひと昔前の少女漫画でよく見た女子間のゴタゴタ(妬み・嫉み・辛みとか)はほぼ無く、アイドルグループの7人は基本的には仲が良い。これまた主題はオタク側なので、アイドルグループ内で波風立ててもメインがブレるし、アニメ全体の雰囲気と合わないし、観たくもない。ラブライブでも仲良しこよしだったし、最近はゴタゴタするのは流行らないのかもね。

ただ、本作としては、仲良しサークルのような雰囲気である。作中でグループメンバーの人気投票があるのだが、発表された順位を基本的にメンバーは受け入れるという流れであり、競争心が足りないと感じる。これはアイドルグループの成長として健全な状態ではないだろう。グループのリーダーが「武道館を目指す」と言っても説得力がない。

が、これが次なる飛躍への演出であり、少しずつメンバーたちの意識改革が起きてグループが成長していく、とかいうストーリーだったら面白いと思う。(原作は未読なので、今後どういう展開になるのか存じてませんが。。)

 

「生きがい」の多様性を感じる

いきなり何を言ってるのかと思うかもしれないが、この作品、意外と深いメッセージ性があるのではないかと思ってしまった。

冒頭で書いた通り、「積む」という行為を視聴者がどう受け取るかで本作の評価が変わってくるように思える。所謂、推しのアイドルと長い時間握手をしたい、人気投票で上位にさせたい、というオタクの一途な想いを成就させる手段として、「積む」行為を作中のオタクたちがやりまくっている。この行為の是非を問うつもりは無い。ただ、こういうことに嫌悪感を表す視聴者も一定以上の割合でいるはずである。

このアニメの制作陣たちは、この嫌悪感を抱く視聴者も取り込むために、「積む」行為のオタクの心情や合理性・妥当性等々を分かりやすく説明する、という演出を一切しないのである。この世界では、「積む」行為は自明の理であるため、わざわざ言葉の定義・証明をする必要が無いのだ。

昨今のデジタル化も相まって、”物の所有”に特別な価値を見出さなくなった現代において、「積む」という行為は至って一般的なお金の使い道の1つであることをこのアニメは示している。クラウドファンディングであれ、思想とかに共感し、応援(お金)をする、という流れという点では「積む」と同じである。

自分の生きがいのためにお金を使う。この「生きがい」の多様性を受け入れる時期に世界は来ているのではないかと感じている。なんつって。

  

タイトル的に売れない地下アイドルが最終的には武道館でライブをするサクセスストーリーかと思ったら、想像以上に地に足のついた展開であった。最後の方はアイドルたち(およびオタクたち)に愛着も沸いてきたので、もう少し続きを観てみたい。でも、二期は確報無し。まぁまだ一期が終わったばかりなので期待して待ちましょう。

  

*1:たぶん、まつげの線画を書いた後、上まつげ部分は色を反転しているのだと思う

*2:これでも大学院で3DCGを専攻していたので、この見分けについては自信がある方なのだが